c1011 拗ね顔


杯を交わす時、父は決して、目を合わせまい、としていました。
拗ねているように、視線を外し、何かを必死で耐えている様子。
多分、視線が合えば、上京は取りやめなさい、と、口から出るのを耐えていたのでしょう。
両親にとって、一番辛い時だったのかもしれません。
少年は、心から寂しがる両親の横顔を見せつけられ、白髪の様子や、禿げ具合、シワの数までしっかりと瞼に焼き付け、刻々と迫る別れが辛く、この世で一番長い夜を過ごしました。
石垣島の港は遠浅のため、沖縄本島行きの大型船が港に入れません。
7、8隻の橋渡船が、沖の本船まで荷物や人を運び、最後に見送り人を運びます。
本船は、一度目の汽笛でゆっくりと走り出し、見送り船は、別れを惜しむかのように、周りを追走。
覚悟の上とはいえ、親との生き別れは、これが最後で、2度と会う事が出来ないのかと思うと、あまりにも切なく、身を引き裂かれる程辛いものがあります。

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