m1362 大泥棒


ヤモリなら尻尾を切って逃げるが、へばりついたまま、母親はコン棒振りかざし、恐ろしい形相で、事あらば、と一撃態勢、身動き出来ない状態。
後手にねじ上げられ、家の中に引きずり込まれた。
そして両手を後手に、柱に縛りつけられてしまったのだ。
普通なら説教をし、誤れば解き放つのだが、かわいい一人娘を狙ったにっくき男、親父は気がすまない。
夜が明けると、村中の人に「大泥棒を捕まえたから、顔を見てやってくれ」と、振れ回ったのだ。
隣村からも見物に来、秀雄や久雄などまでがドジしやがったなとニタニタ見物、これ程の屈辱は無い、という晒し者。
親が謝り解き放たれたが、昭二は外にも出ずこもりっ切りだ。
自殺しかねない、見るに見かね、次男の昭二は島からこっそり逃げるように出る、勿論行き先もなく着の身着のまま見送る人も無い。
以後の行方は親兄弟、誰一人とて知る人はない。
あれ程明るかった明子は、以来ふさぎ込んでしまった。
中学生の頃はテニスに打ち込み、地区代表として県大会まで出る程の腕前。
みんなの人気者だった。

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