m1358 明子の素振り


日本の南端、この黒島ではその昔、夜這いは日常の出来事で、公然と行われていた。
勿論、夜這いが成立するには、お互いがある程度、好意を持ち、受け入れられていたのである。
昭二は二十歳。隣村の十八歳、明子に、ほのかな想いを寄せていた。
夕陽が真っ赤に沈みかけた頃、隣村との間にある森へ、牛の草刈リに出かけた。
その森へ明子もまた、薪ひろいに来ていた。二人は森の中で、出会わしたのである。
明子の素振りも決して昭二が嫌いと言う訳ではなく、好意を持っているかに見えた。
明子は流行歌を口ずさみ、さも楽しそうに嬉しそうに薪拾いをしていた。
声をかければよかったのだが、昭二は寡黙で気が小さく、そのまま別れてしまったのである。
夜は村の中心にある大きなガジュマルの下で青年達は、さんさんごご集まって酒を酌み交わす。
昭二も先輩達といっしょに飲んでいたが、話題が夜這いの話で盛り上がっていた。
「おい! 中里村の明子はよ今一番いい、熟しているぞ、誰が夜這いをかけるんだ」
他の先輩が「中里村の秀雄がよあの子に気がある、近々間違いなく夜這いをかけるはずだぞ」

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